春 　――三月。 　伊藤啓太にとっては、就職先が決まってほっとしつつも、卒業だ、新しい生活のための準備だと慌ただしい日々。 　『先生』になるためにはスーツも増やしてネクタイも。 　仕事に持っていくカバンはどうしよう？ 　そして大事な心の準備。――いよいよ本当にベルリバティの先生になるんだ。 　鈴菱和希にとっては相変わらず忙しい日々。 　教師になる啓太の初々しい気持ちや緊張が伝わって、改めてかわいいなあと惚れ直したり。 　忙しい日々の中、新生活に必要な身の回りのものを買いたいという啓太に、 「だったら俺が啓太に就職祝いとしてプレゼントするよ」。 　だけどかわいい恋人に、そんないいものじゃなくていいから、自分で買うからと断られたり。 　――その一方で、気がかりなことひとつ。 　朝比奈勇気にとっては、卒業とともにベルリバティに入学する準備をする日々。 　中学時代の友達とも今のうちにたくさん遊んでおこう！ 　そしたら持ち前の運で、海外旅行が大当たり。 　うわ〜っ。 　学校も気になるけど……とりあえずは家族みんなで行っちゃおうか！ 　それでは今度は旅行の準備。 　笠原智友にとっては……明るい光がどんどん失われていく日々。 　現実じゃなければいいと願う毎日。 　そして悪夢の時間。暗い昏い海の底。 　思い出すのも、自分をつなぎとめるのも過去のことばかり。 　未来への展望などなにもなく。 　そうして迎える新しい日々。 「別に誰が来たってどうでもいいよ。俺には関係ないし」 「はじめまして。……よろしくなトモ！」 　誰に対してもあたたかい光が降り注ぐ春は、ここからはじまる――。 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　201503