タリナイモノ 軽くノックをして和希が啓太の部屋を訪れると、啓太はベッドに寄りかかって床に座り込んでいた。 両膝を立てて体を丸めているその姿に、和希は「どうしたんだ？」と声をかける。 「ん･･･ちょっと。考えていることがあってさ」 「なにを考えてたんだよ。俺に話してみろよ」 そう言って和希も同じように床に座り込んで啓太と並んだ。啓太はさしてためらわずに、和希に自分の考えごとの内容を話しはじめた。 「今日学園で王様や女王様たちを見ていて思ったんだけどさ、いまさらなんだけど･･･俺には足りないものがたくさんあるよなって」 「足りないもの？」 「そう。ベルリバティにいる人たちはみんなものすごい才能を持っているのに、俺には運だけしかないだろ？ そんなのもうわかってるし、それだけじゃないように一生懸命頑張っている最中だからいつもは気にならないんだけど、でも今日はちょっとそこに引っかかっちゃってさ」 「啓太。啓太にあるのは運だけじゃないぞ」 「ありがとう和希。うん、それは本当はわかっているんだけどな」 「全然わかってないだろ」 隣に座る和希の手が伸びてきて、啓太のあごを捕らえた。啓太は強引に和希の方に顔を向かせられる。 「ちょ、和希っ」 「俺は、人よりちょっと運がいいだけの人間に惚れた覚えはないぞ。啓太には語りきれないくらいの魅力があって、俺はそこにまいっちゃってるんだよ。それはこの学園の他のみんなだってよくわかってるよ」 「和希･･･」 「啓太が本当に運だけだったら俺はここまで骨抜きにされていないし、啓太に近づいてくる人間にいちいち警戒なんかしやしないよ。どれもこれも、啓太がたまらなく魅力的だからだろ」 啓太はそのまま和希に身体を引き寄せられ、優しく抱きしめられた。 その腕の力を心地よく感じながら、少しからかうような口調で言ってみる。 「和希、俺に骨抜きにされてるんだ？」 「されてるよ。俺は啓太に出会ってから、ずっと啓太にめろめろなんだよ」 「め、めろめろって･･･。それはさすがにちょっと恥ずかしいよ･･･」 「啓太は自分が俺をどれほど大きく変えたのか知らなさ過ぎるよ。啓太は自分が思っている以上に俺や他のみんなに大きな影響を与えているんだよ」 「そう･･･かな？」 「そうだよ。俺は本当に啓太になにもかも変えられたんだよ」 少し身体を引いた和希が啓太の顔をのぞきこんできた。啓太はそれを照れくさく思いながらも、小さく頷いた。 「俺だって。俺だって和希に人生変えられたよ。自分がこんなに一人の人間を強く想う力があるなんて知らなかった。こんなに熱に浮かされたようになって、理性が持っていかれて、本当にたまらないくらい人を好きになる気持ちなんて知らなかった。和希と出会っていなかったら俺はそんな気持ち、きっと一生知らなかったよ」 「･･･理性が持っていかれて、身体がぐずぐずに溶けて？」 「･･･そんなこと言ってないだろ」 「でも本当のことだろ？ 啓太はきっと俺に出会わなかったら、男に抱かれて感じちゃうような身体だったってことも、知らなかったよな？」 「もとからそんなふうだったみたいな言い方するなよな。俺は和希に･･･」 「俺に？ なに？」 「･･････」 こちらを見つめる和希の瞳の中に、あきらかに啓太をからかおうとする意思が見て取れて啓太は口をつぐむ。そのまま黙って和希を睨みつけていると、和希は笑って啓太の耳に口を寄せてきた。 「――啓太は俺に開発されちゃった？」 「和希っ！」 「茶化してごめん。啓太が俺を変えたように、俺も啓太の人生を変えられたんだとしたらつい嬉しくてさ。願わくば、啓太を幸せにしてる方向で変えられているといいけどな」 そういった和希の言葉の中に紛れもない和希の本音が見えて、啓太は溜息をつく。 「目の前で見てたらそれぐらいわかるだろ？」 「目の前で見てるからわからなくなるよ。俺はいつも、啓太を怒らせたり泣かせてばかりいるだろ」 「でも俺はそれ以上に和希の前で笑ってるだろ？ だから･･･」 「啓太は俺と違って、俺と再会してなくても俺がそばにいなくてもきっと笑ってたよ」 「――」 「でも啓太の足りないものか･･･。言われてみると、確かに俺から見ても啓太にはいろいろ足りないものがあるような気がするな」 抱きしめていた啓太から腕をといて、和希はしばらくうーんと考え込んだ。 「いくらなんでもおまえと比べるなよ。和希と比べられたら、俺は足りないものだらけなんだからな」 「別に俺と比べたりなんかしないよ。そんなの無意味だろ。ただ今の啓太に足りなくて、俺が足りないなって思うのは･･････」 自分に足りないものがたくさんあることは自覚していても、恋人である和希になにを言われるのだろうかと、啓太はとっさに身構える。和希はいくらか緊張している様子の啓太を見て、声に笑いをにじませながら言った。 「まず啓太の足りないものその１。俺への深い愛、だろ？」 「はあ？」 「それから積極性。啓太には自分からもっと積極的に俺を求めようとする行動力が欠けているだろ？ それがその２」 「和希･･･」 「感度は充分あるとして、あとは経験値かな。勿論これは俺と回数をこなしていけばそのうち･･･」 「和希！ なんだよそれっ」 「だから啓太の足りないもの、だろ？ 俺から見て色気とかわいさは充分あるから、やっぱりときには俺を誘っちゃうような大胆さが啓太にほしいよな。ときには頬を染めて恥らって、ときにはこっちが惹き込まれるほど大胆に俺を誘惑･･････」 「･･････」 一人で呟いて一人でにやけている和希から思わず少し距離をとりながら、啓太は和希に対抗すべく自分も和希のことを考えはじめた。 「和希にだって足りないものがいくつかあるだろ？ 和希が俺のことを言うなら、俺だって和希のことを言っちゃうぞ」 「どうぞ。啓太から見て俺になにが足りないって？」 「･･･和希には広い視野とか協調性がまず足りないよな」 「広い視野に協調性ね。俺は自分では、両方とも持ち合わせていると思うけどな。でなきゃ仕事なんかこなせないし、俺はベルリバティの中で他のみんなとそこそこうまくやってると思うけど？」 「じゃあ訂正する。確かに和希は仕事の面では広い視野を持っているんだろうし、仕事でもベルリバティでも他の人とうまくやっていると思う。でも和希は、うまく言えないけど俺に関することだけ･･･」 「啓太に関することだけ？」 どこか面白がるように聞き返してきた和希に向けて、啓太は数瞬ためらったあとはっきりと告げた。 「俺が関わると、和希は途端に視野が狭くなって協調性がなくなるよな？ 周りが見えなくなって、他の人のことが考えられなくなって、自分の都合で全部進めようとするだろ。今までそれでやりすぎたこと、たくさんあったよな？」 啓太の頭の中では和希が過去に起こしたいくつかの出来事が思い浮かんでいた。そのときは冷静に考えられなくても、あとから考えてみればかなり無茶なこともあったのだ。和希の行動で、複数の人間が迷惑を被っている。 自分に関係することに和希が一生懸命になってくれるのは啓太としても嬉しかったが、それにしてもやはりやりすぎのような気がする。和希には立場があるのだし、本来人一倍冷静な判断力と慎重な行動が求められるのではないだろうか。 「俺のことで和希がそこまでしてくれるのは嬉しいけど、でもやっぱり･･･」 「そんなの、当然のことだよ」 啓太の言葉を遮って、和希からはあっさりした声が返ってきた。 「和希!?」 「啓太が関係するときに周りが見えなくなったり、他の人間のことが考えられなくなるわけじゃなくて、全部必要ないからそうしないだけだよ。俺にとっては啓太のことが第一なんだから、他のことなんてどうだっていい。それが当然なんだよ」 「当然て、それじゃあ困るだろ!? だって和希は理事長なんだし、大人なんだし、もっとちゃんと周りのことも考えないと･･･！」 「別に困らないよ。俺は啓太のことだけちゃんと考えられればそれでいいんだから。理事長だろうと大人だろうと啓太の前ではそんなの関係なくて、俺はただ啓太に惚れてるだけの一人の男だよ」 「･･･････和希･･･」 平然とそう言いきる和希に、啓太はがっくりと肩を落とした。 「和希には常識とか臆面とか、理事長としての自覚とか、足りないものがたくさんありすぎるよ･･･」 「だからさっきも言ったように、別にそれがなくても困るわけじゃないから」 「和希が困らなくても俺が困るよ･･･」 「俺にすれば『啓太に関することだけ』なんて、むしろ褒め言葉と同じだよ。だって俺の世界は啓太を中心に回っているんだからな」 「――」 和希に視線を捕らえられて、はっきりとそう言われる。 啓太はしばらく自分も和希を見つめ返したあと、すいっと視線をそらした。 和希の言葉は真実で、そこに誇張も嘘も混じっていないことが和希の視線だけで啓太にも充分伝わってきた。だからこそ啓太はそのまま和希の目を見返すのがつらかった。 「･･････啓太？」 「･･････俺の世界の中心も和希だよ。和希、だけど･･･」 「うん」 「俺は･･････多分、和希と同じ重さじゃないよ」 「うん」 「俺はまだ、和希と同じところまで辿りつけていない･･････」 和希と視線を合わせないまま、苦しそうに言った啓太の言葉に、和希は再び相槌を打った。 「･･････うん」 「俺は和希と同じものの見方、同じ考え方は出来ないよ。もしかすると、ずっとこのままかもしれない･･･。俺は･･･」 「･･････啓太の中が俺のことだけでいっぱいになって、俺以外見られなくなって、他の人間のことなんてどうだっていいってなったら、確かに俺はちょっと嬉しいかもしれない。そんなふうになってもらえたらいいなっていう気持ちが俺の中にないとは言いきれない。でも、俺と啓太を比べて啓太が俺と同じようになるっていうのは無意味なことだろ？」 「･･････」 「俺は自分と同じ人間を好きになったわけじゃないよ。啓太が俺と全然違うから惹かれたんだよ」 「･･････」 「出会った一番最初のときから啓太が俺と全然違う人間だってことはわかってた。同じ時間を過ごしていくうちにますますそのことがわかって、だから俺はますます啓太に惹かれたよ。啓太が啓太だから、俺はここまでおまえに惚れたんだよ」 和希の手が伸びてきて、啓太の髪を梳くようにして頭を撫でた。 それでも啓太は顔を上げず、ずっと俯いてた。床を見つめたまま、小さな声で呟く。 「俺には･･･頭のよさとか運動神経とか、特別な才能とか人に対する優しさとか、たくさんたくさん足りないものがあるけど、でもその中で一番足りなくて、一番必要なものがなにかわかった」 「啓太？」 「俺には、和希を満たしてあげられるようなものが全然足りないんだ。すごく大事なものなのにいつも足りなくて、和希に追いつけなくて、和希を満たしてあげられていない。俺の前に和希がいて、俺は懸命に和希を追いかけているつもりなのに、いつもいろんなものを見すぎていろんなことを考えすぎて、気がつくと和希のことだけじゃなくなってて俺はいつも和希を待たせてしまっているんだ」 「啓太。俺みたいに視野が狭くて協調性がないのは困るんだろ？」 宥めるように優しくそう言った和希の言葉に、啓太は首を横に振った。 「でも俺にはそういうところが全然足りないんだ。俺は、もっと頑張らなきゃいけないんだ。和希だってさっき俺に、和希への深い愛が足りないって言ってただろ？ 俺は和希を満たしてあげられるように、和希がもういらないって思うくらいまでちゃんと頑張って和希のことを･･･」 「こーら。そういうのは頑張ることじゃないだろ？」 頭に触れていた和希の手が拳の形に固められて、こつんと啓太の頭に当てられた。 「さっきは冗談で言ってみただけで、俺は本気でそう思っているわけじゃないし、啓太がそう考えてくれただけで俺にはもう充分だよ。さっきも言ったように俺は啓太に俺と同じ人間になることを望んでいるわけじゃないよ。むしろ啓太には啓太のままでいてほしいよ」 「でもそれじゃあ――俺が、はがゆいんだ。･･･さっきだって･･･」 「さっき？」 「･･････」 啓太は唇を軽く噛み、和希の質問には答えなかった。 『――願わくば、啓太を幸せにしてる方向で変えられているといいけどな』 啓太の頭の中で、先ほど和希と行った会話の内容が思い出されていた。 『目の前で見てたらそれぐらいわかるだろ？』 『目の前で見てるからわからなくなるよ。俺はいつも、啓太を怒らせたり泣かせてばかりいるだろ』 『でも俺はそれ以上に和希の前で笑ってるだろ？ だから･･･』 『啓太は俺と違って、俺と再会してなくても俺がそばにいなくてもきっと笑ってたよ』 ――こんなにそばにいるのに自分はまだまだ足りなくて、和希を満たしてあげられていないと啓太は思う。 そして、もっともっと想いを注ぎ込んで、少しでも多く和希に伝わってほしいと思う。 和希が重ねてきた年月にはどうやっても追いつけないけれど、でももっとちゃんと努力すれば、ずっと自分を見てくれたこの人に、少しでも自分の気持ちが伝わるんじゃないかと思う。 口をつぐんだ啓太に対して、和希は溜息をついた。 「啓太の中でなにが気になっているのかわからないけど、本当にそういうのは頑張ることじゃないし、啓太は啓太の自然なままで俺を好きでいてくれればいいよ」 「･･････」 「･･･それとも啓太がもっと俺だけに夢中になってもらえるように俺が頑張ればいい？ 俺の努力が足りない？ 俺の方こそもっと努力して･･･」 「そんなのは･･･っ」 和希の言葉に反射的に顔を上げた啓太は、直後和希の笑顔に迎えられることになった。啓太の言葉の続きを引き取って和希が笑う。 「努力することじゃない、だろ？ ほら同じだよ」 「和希･･･」 「･･････俺は本当に欲の深い人間だからさ。きっときりがないよ。満たされるなんてことは、俺にはずっとないかもしれないよ」 「――」 そばにいるのにどこか別のところを見るようにそう言った和希に、啓太は反射的に手を伸ばして和希の腕をつかんでいた。とっさに伝えるべき言葉が出てこなかったけれど、視線だけで自分の気持ちを伝えるように和希の顔を一生懸命に見つめる。 自分の腕をつかむ啓太の力強さに気づいた和希が、ふとやわらかい表情をのぞかせて啓太の手を自分の腕からはずさせた。 「でも、そんなに啓太が気にするんなら、啓太は啓太ができることを頑張ればいいよ。俺に啓太の一生懸命な気持ちが伝わる、すごく簡単な方法があるだろ？」 「俺に、できること？」 「そう。さっきも言っただろ。俺に対して積極的になってって。たまには大胆な啓太が見たいなあなんて。それぐらいでいいなんてお手軽だろ？」 「和希っ。ふざけるなよ！」 「本気だよ。･･･と言いたいところだけど、どっちでもいいよ。強制するものでもないし、啓太に無理にそうしてもらっても俺は･･････啓太？ 啓･･･」 和希が思わず声を失う。 一度は和希に向けて怒った啓太だったが、今は和希の目の前で自分の服のボタンをはずしはじめていた。 和希と目を合わせないその顔が、いくらか赤く染まっている。 「大胆て、積極的って、どうすればいい･･･？」 「･･････」 「か、和希？」 「･･････」 「って、なんでそこで笑ってんだよっ！ 最初に和希が言ったんだろ!?」 「本当に啓太は･･････。俺が、贅沢なだけなんだよ。ちゃんとわかっているのに欲深でさ」 ボタンをはずし終えた啓太の背中に手を回し、和希はその身体を引き寄せた。背中にあてた手を滑らせながら、もう一方の手でも啓太の肌に触れる。 「でも俺はずるいから、そういう啓太の気持ちを利用しちゃうんだけどね」 「和･･･っ」 露になった啓太の首筋に顔を埋める。和希の唇の感触に思わず身を竦めた啓太の腰を、和希はさらに強く引き寄せた。 「はい、そこで逃げない。今日の啓太は大胆なんだろ？」 「･･････っ」 「啓太から誘ってくれたんだし、ここで逃げるなんていう中途半端なことはしないよな？」 そんな言葉で啓太の逃げ道を封じたあとで、和希は自分の肩口にあてられていた啓太の手を自分の胸元に導いた。 「和希？」 「じゃあ今日は積極的な啓太くんに、俺の服を脱がせてもらおうかな」 「う･･･」 「別に啓太がいやならいいけどな。啓太がどうしても恥ずかしくっていやだって言うのならな。そこまで啓太が嫌がるならしょうがないよな。あーあ･･･」 「しつこいぞ、和希！」 和希の頭を拳で殴ってから、啓太は和希の服を引っ張って和希の顔を引き寄せると、そのまま噛みつくようにキスをした。戸惑っているらしい和希に、啓太は自分から積極的にだんだんと深いキスを仕掛けていく。 キスを終えて唇を離してから、啓太は和希の服に手をかけた。 ――大胆と言いながらも、その表情には照れと恥じらいがある。 積極的と言いながらも、和希の服を脱がす指は緊張のせいかかすかに震えていて。 別の意味で誘惑されそうな啓太の一生懸命さに、和希は笑い出しそうになるのを懸命にこらえていた。 「･･･服、脱がしたけど、それから？」 「それから？ 大胆な啓太くんはなにをしてくれるって？」 「･･････っ」 「なーんてな。もういいよ。啓太の気持ちはちゃんと伝わってるから。――啓太にはもともと足りないものなんかなくて、本当に俺が贅沢なだけなんだよ」 「･･････」 啓太は一瞬のためらいのあと、和希の裸の胸に触れた。それからその肌にそっと顔を寄せる。 「啓太？」 「･･･でも俺は、そんなふうに贅沢だっていう和希のことも、ちゃんと満たしてあげたいよ」 「啓太･･･」 「だから、つ、つたないとは思うけど今日は･･･」 「――まったく。そんなふうにされたら俺はますますめろめろになって啓太以外見られなくなるよ」 「え？」 「俺の視野を狭くしてるのも、協調性をなくしてるのも、俺を欲深にさせてるのもみんな啓太のせいだってこと。俺の足りないところも、俺が足りないからもっとって思うのも全部。そんなふうにされたら、俺はもっともっと贅沢になるし、それだけ啓太が大変になるんだぞ？」 「･･････いいよ。和希のことで大変になるなら俺は全然かまわないし、もっと和希に俺を求めてほしいから」 「･･･それだけで充分大胆な誘い文句だよ啓太」 和希はそう言うと、自分の胸に顔を寄せている啓太の唇を指でなぞった。それから指の先端をするりと啓太の口の中にもぐらせる。 「･･････っ」 「じゃあ今日は本当に啓太の気持ちを見せてもらおうかな。俺のために大胆で積極的な啓太が見たいよ。･･････いい？」 和希にさらに口の中に指を深く入れられながら聞かれて、啓太は小さく頷いた。 ＥＮＤ |