After ３． 啓太のズボンの前を寛げた写真を撮ったあと、和希は啓太に自分でズボンと下着を脱ぐように言った。 「……もしかして俺が脱いでいる途中の写真も撮ったりするのか」 「あたり」 デジカメを構えたままの和希がにっと笑う。 「そんな作為的なのはやだ。いつもは大抵和希が脱がすんだから、今だってそうすればいい。……いつもと同じようにされてるときなら、もう撮られてもかまわないから…」 「なら啓太が“いつもと同じように”脱げばいいだろ。別にわざわざデジカメを意識して脱がなくていいからさ。ただ、俺のことだけは意識して脱いで」 「……」 黙ったまま睨んでいる啓太の手をとり、和希が手の甲に宥めるような軽いキスを落とす。 「啓太。そんな顔してないで。これから俺に抱かれるんだってことを意識しながら脱いで」 「……」 「啓太だって、さっきは俺を脱がせただろ」 「それとこれとは違うだろ！ でも…じゃあいいよ。“いつもと同じように”脱げばいいんだな。早すぎて撮れなかったとか手元がぶれたとか言うなよ！」 啓太の手が自分のズボンにかかる。 「だから啓太は、一つ条件を忘れてるよ。ちゃんとこれから俺に抱かれることを意識して脱いでって言っただろ。啓太はそういうときは一気に脱がないだろ。いつも、人の視線を気にしながら恥ずかしそうに脱ぐくせに」 「そんなことない…」 そう言いながらも、一気に脱ごうとしていた啓太の手から勢いがなくなっていた。 ベッドに横になったままわずかに腰を浮かせて、啓太が自分のズボンと下着を脱いでいく。さすがにデジカメが目の前にあることでむしろいつも以上にゆっくりとした動作だった。 和希は恥ずかしそうに目を伏せた啓太の顔や、躊躇しながら脱いでいく様子をデジカメに収めていく。ただ啓太の裸を撮りたいだけなら自分が脱がせてもいいのだが、この場合啓太が自分で脱ぐことが和希にとっては重要なのだった。 ――自分に抱かれるために。 啓太が、ベルリバティの制服を自ら脱いでいくのだ。 「……こ、これでいいだろ」 脱ぎ終えたズボンと下着をベッドの下に放り投げた啓太が言った。 啓太としては本当は恥ずかしくて手で体を隠したい心境だったが、そうしても結局は見られるのだし、いまさらあがくほうが情けない気がして体は隠さなかった。和希の視線を感じても、デジカメが向けられているのがわかっていても。 「うん。ありがとう啓太」 和希が啓太の体に身を重ねる。 露になった自分の肌と、シャツをはだけている和希の肌が直接触れ合い、その瞬間啓太は恥ずかしさを忘れた。唇にキスしてくる和希の背中に、自分の腕を回す。 和希はその手を振りほどくことなく、すぐさま反応しはじめていた啓太自身に手を伸ばしてきた。 「…んっ…」 左手で包み込み、ゆっくりと扱いてくる。その一方でデジカメをベッドに置いた和希の右手が啓太の胸に触れる。 肌を滑る和希の唇に、啓太は本格的に抱かれることを意識した。 和希の手がデジカメから離れても、それを奪おうとか、遠くに放り投げてしまおうとは考えなかった。ここでデジカメを壊したらとりあえず今日の『撮影』は終了するだろうと思ったが、もうそんなことはどうでもよくなっていた。デジカメのことで中途半端だった愛撫が、本格的に始められたのが嬉しい。 ただ和希も、啓太がなにもしないと見込んでデジカメから手を離したように思えて、それは少し癪だったが。 「…は…っ…あ、和、希……っ」 「…ん…今まで、中途半端でごめんな。結果的に焦らすことになって、悪かった」 「なに言って……全、然悪いと思ってる顔、してな……んっ」 「やっぱりわかるか。中途半端なままだった啓太の体が、今こんなに悦んでいるのがわかるからな」 和希が故意に手の動きを緩める。すると焦れた啓太の腰が反射的に揺らめいた。 声に出さず、和希が笑う。 「和、希…！」 「ごめんごめん。ちょっと嬉しかったから、もっと確かめてみたかっただけ。今日の啓太は最初からその気だったもんな」 和希が身を起こし、啓太の膝を立てさせ、足を割り開いた。 「…っ…！」 「だからこれは俺からのおわびだよ」 「あっ…！」 身を屈めた和希が啓太自身に手をかけ、そのまま口を寄せる。 「和希…！」 啓太が慌てて手を伸ばし、和希の頭に自分の手を置いた。引き止めたいという意思をその手に込められないまま、和希の髪にゆるく指をかける。 「ふぁっ、あ…っ」 和希が充分に張り詰めた啓太自身にゆっくりと舌を這わせはじめた。 「ん……っ」 和希の舌が啓太自身を上下し、ときおり先端をくすぐってはすぐに別の場所に移っていく。 和希の口の中に一気に取り込まれるでもなく、添えた手で強く扱かれるわけでもない。ただ濡れた舌が自分自身の至るところを舐め、滑っていく感覚に、啓太はおわびと言われながらもますます焦らされているような気がした。 「か、和希…それ、おわびじゃない、だろ……んっ、あ…っ…」 「なんで…俺からのおわびだろ。ん……こうして、啓太に奉仕してやってる……」 「嘘、だ……やっ」 和希に軽く歯を当てられる。それすらも刺激になり、啓太の腰がまた揺らめいた。 「……じゃあ、啓太の求めるおわびって…どんなのかな。要するにこれだけじゃ、物足りない…？」 和希の言葉の合間にも濡れた舌の感覚に襲われる。 「言って啓太。物足りないなら物足りないって。そしたら……ん…ちゃんと希望を叶えて、あげるよ…」 「あっ、ずるい、そんなの…。俺が最初から…んっ…その気になってるって知ってるんだから…あ、もっと…っ」 「もっと？」 「そんな焦らすようなのじゃなくて、も、もっと強くて、は……んっ、あっ…」 「強くて？」 「は…激しいのがいい……っ」 片腕で赤くなった顔を隠して啓太が心の中の思いを口にする。 和希はそれを聞いた途端、啓太自身から手と舌を離した。 「じゃあ啓太。俺が手を動かしやすいように、自分の膝を自分で押さえて。顔隠してないで、ほら。そしたらちゃんと啓太好みの激しいのをしてやるからさ」 「…っ俺好みってなんだよ…」 「いいからいいから。俺は、このままもっと焦らしてもいいんだけど？」 「……」 啓太は顔を隠していた腕や和希の髪に絡めていた手をのろのろと動かし、自分の膝に置いた。いつもならそんなことをわざわざ求められはしない、ということに気づくことなく、啓太がさらに自分から足を開く。強い快感を欲する気持ちが啓太の思考回路を溶けさせていた。 「…こ、これで…っ」 「うん。ありがとう啓太。これも、“使えそう”だよ」 「え？」 和希の楽しそうな声にはっとすると、和希の手にはいつの間にかまたデジカメが握られていた。 「…あっ…」 「大丈夫。かわいい啓太の写真は他の誰にも見せないから」 喜々として和希は啓太の写真を再びデジカメに収める。啓太が自分で足を押さえ、高ぶらせた自分自身を見せている写真。その先端は啓太本人の先走りの雫と舐められたときの唾液とでいやらしく濡れているのだ。撮る瞬間見せた戸惑いの表情が、またさらに和希を煽った。 「啓太、そのままでいて。ちゃんと激しいのしてやるから」 和希はデジカメを啓太の腹の上に置くと、再び啓太自身に口を寄せた。今度は先端から口に含んでいく。 「……っ」 急に自分の腹の上に置かれた物の冷たさに、瞬間啓太の体が驚く。だがその冷たさに慣れる間もなく、すぐに下半身から強い快感が襲ってきた。 「あっ…ふっぁ……んっ…ああ…っ」 和希の口に取り込まれるのとともに和希の指も啓太の弱いところを責めはじめる。今までと違う急激に追い上げてくるような快感に啓太の意識はついていくのがやっとだった。膝から離した手でシーツをつかみ、その快感に耐える。 「ん…和、希…あっ、ああ……！」 そのまま一気に追い上げられた。 「和希…和希…っ。ちょっと待…っ、も、もう俺……！」 「ん……そのままイっていいよ」 和希の口から開放されても、啓太を追い詰める快感には変わりがなかった。容赦のない和希の手が啓太の射精を促す。 啓太は自分の上に置かれていたデジカメの重さがなくなったことにも気づかないまま、自分の中からあふれてくる快感に身を任せた。 「あっ、ああっ……かず、き、俺もう…っ――っ！！」 達した瞬間、和希の手の中から弾けた啓太の快感の証が、啓太の腹部を濡らした。 だがそのことに啓太が気づいたのは、息を整え、快感でとんでいた思考能力がだんだんと戻ってきてからだった。 自分で自分の体を汚した感触を自覚して、啓太は気恥ずかしさを覚える。二人で抱き合っているときにこすれて自分を汚してしまうことはあるが、こんな一方的に達して汚してしまうのは久々な気がした。和希の手だけでいかされるときはともかく、口も使われるときは大抵和希の口の中に出さざるをえなくなるから。 そんな恥ずかしいことまで考えてしまって顔を赤くした啓太の耳に、「ごめんな、啓太」という和希の声が聞こえた。 「……え？」 「ほんとにごめん」 「なに、が……」 首を動かしてぼんやりと和希の顔を見返した啓太は、次に和希の手の中のデジカメに気づいた。意識がはっきりと覚醒する。 「和希…もしかして今…それ…んっ」 言葉の途中で和希の手に汚れた腹部を撫でられた。吐精したばかりの敏感な体がぬるりとしたその感触だけで反応する。 「やっぱさ、俺が飲むところより、啓太にかかった方が絵になるだろ。自分の顔撮ってもしょうがないしさ」 そう言って、和希は啓太の白濁した飛沫で濡れた指を自分の舌で舐めた。 「啓太の飲めなかったのはもったいなかったけど」 「も、もったいないってなんだよっ。大体こんなの故意にやるなんて変……和希！ 人の話聞けよ…っ」 自分の指を舐めたあと、和希が啓太の体に乗りかかり、濡れた肌を直接舐めはじめた。啓太が手で制止しようとするのにも構わず舌を滑らせていく。 「和、希…っ」 ただ自分の体を舐められているだけなのに、和希の舌の濡れた感触と、こちらの制止を無視してどんどんことを進めようとする和希の意思に、啓太の体が再び熱を持ちはじめる。 「ん、やっぱり…もったいない…」 「もったいなくなんか……んっ」 反論しかけた啓太だが、肌を舐められたままちらりと和希に視線を送られて、体が震えた。和希の目に浮かんでいた、自分をもっと喰らおうとするかのような強い光に捕らえられる。 和希の手に再び啓太自身を触れられると、啓太としてはもう自分の体の反応に引きずられるしかなかった。 「あっ…ちょ、ちょっと待て、和希……俺、また……っ」 「待たない。激しくて強くてたくさんされるのが啓太の好みだろ」 「そんなこと言ってない…あ、和希……っ、や、だ……！」 昨日は抱き合っていない、また昼間は和希を好きだという気持ちが煽られている。そのこともあってか、啓太はすぐに追い上げられていった。 だが啓太はそのまま達するのをよしとせず、ギリギリのところでこらえる。 「イきすぎるとあとがつらくなる？ でも、挿れるときだってちゃんと感じさせて優しく…」 「そうじゃ、なくて…はっ、あ、和希が…っ」 和希のはだけたシャツをつかみ、啓太は懸命に訴えた。 「俺、ばかりじゃなくて、和希、も……っ」 「……それは、俺を巻き込んだら撮られなくてすむから？ それで…」 啓太はシャツをつかんでいる手で和希の胸を叩いた。 「そうじゃないだろ。撮る撮らないに関係なく、和希にもちゃんと、き…気持ちよくなってほしいから、俺は…っ」 「啓太…。うん、わかった。じゃあ啓太も、俺にさっきと同じことしてくれる？」 和希は啓太から体を起こすと、デジカメを持ったまま自分のズボンの前を寛げはじめた。 「お、同じことって……」 「勿論、啓太の口で」 啓太は唾を飲み込んだ。和希の手にはいまだデジカメがある。 ここで自分がしたのと同じことをさせて、そしてその様子を撮るつもりだろうか――そう思うと、啓太はすぐには動けなかった。 和希にも気持ちよくなってほしいが、その様子を撮られるというのはまた別の話だった。いつもどおりに抱かれている最中ならさほど気にしないでいられるカメラだが、和希が撮っているのは先ほどからいつもと違う構図ばかりのような気がする。 自分から進んで和希のモノを咥えて、和希のために口で必死に頑張っている写真なんて――。 「……っ、い、いいよ。和希がそれを望むなら、俺…っ」 啓太は意を決して言った。 『撮影』を許可してしまったのは自分なのだし、今日はもう、和希も気持ちよくなってくれるならそれでいい…そう思って、和希に自分の意思を伝える。 だが嬉しそうな笑みを浮かべているものと思って見た和希は、苦笑を浮かべていた。 「和希…？」 「ごめん、冗談」 「和希！」 「いくらなんでも、そこまでは啓太にさせないよ。それより、俺も気持ちよくさせてくれるのなら、もう挿れさせて」 「挿――って……」 「手でしてもらうことも考えたけど、やっぱり啓太の中が一番気持ちいいからさ」 そう言って、和希が啓太の手をつかんで身体を起こさせた。啓太を自分の足の上に乗せ、逆に和希が足を伸ばしてベッドに横になる。 「……和希。今日はこれ？」 「そう。今日はコレ。啓太が俺の上に乗って、俺を気持ちよくさせて」 「……いいけど」 「これだったらほら、両手があくからちゃんと撮れるだろ。かわいい啓太をあますことなく」 下から啓太を見上げて、和希が楽しそうに手の中のデジカメを示す。 啓太は思わず、無言で和希の顔とデジカメを交互に見やって大きなため息をついた。 「本当に本気なんだな…」 「まあまあ。とりあえず啓太はカメラなんか気にするなよ。口でするより気が楽だろ？ 俺も、啓太が気持ちよさそうにしているほうが好きだし」 そう言いながら、和希は中途だったズボンの前を完全に寛げ、下着ごとズボンをずらした。それから啓太の手を取り、自分のに触れさせる。 「和希…」 「ここも、啓太が早くほしいって言ってるだろ？」 「ばか…」 和希が啓太の手ごと自分自身を包み込んでゆるく擦りあげる。それは啓太の手の中でたちまち反応した。 「啓太、腰浮かせて。今日はまだ、ほぐしてないだろ」 「う、うん」 和希に言われたとおり、啓太は腰を浮かせた。すぐにデジカメを置いた和希の両手が伸びて、啓太の後ろに回る。 啓太は和希の体の上に手を置き、自分の体を支えた。 |