（大人妄想設定智勇編）　※夢という言葉を忘れたころに参照


「トモ、誕生日おめでとう！」
「……誕生日？　……は？」
「今日だろ、誕生日」
「あー、そういえばそうだったな。で、なに？　プレゼント？　それでこの料理？」
「トモの誕生日だから、ちゃんと祝いたくて」
「誕生日なんて…勇気もわかるだろうけど、いい大人になっていまさら誕生日もなにもないだろ。むしろこない方がありがたい。また一つ年取っただけって話だし。ま、堂々と働かずに金もらえる生活が近づいたと思えば嬉しいか」
「トモ……」
「勇気も無理することない。……それともなに？　誕生日だからおいしいサービスでもしてくれんの？」
「……」
「それならそうと早く言えって」
「……トモの誕生日だからちゃんと祝いたい俺の気持ちもくんでくれよ。こうして直接祝うのはベルリバティのとき以来だし、それに今年は…今までと意味が違うだろ。俺がトモの誕生日をたくさん祝いたいんだ。……サービスだってするつもりだけど、でもその前に普通に…」
「ほんとにしてくれるんだ？」
「トモ」
「……こんなふうに恋人と過ごす誕生日は初めてだな」
「……それは嘘だろ」
「まあな」
「……」
「でも勇気が恋人の誕生日を祝うのは初めてなんだろ？」
「……そうだよ」
「じゃあ、それにつきあってやるよ」
「来年はもうしない……」
「拗ねるなって。とりあえず、二ヶ月後は勇気の恋人としてお前の誕生日を祝うよ。初めて好きになったやつの誕生日だからおもいきり祝いたい。勿論その日は絶対に他の人間に会わせないし、メールも拒否させるからな」
「えっ!?　…っていうかまずはトモの誕生日だろ。年とっただけって言うけど、俺にとってトモの誕生日は特別だし、来年も、再来年もそばにいてもっと祝いたい」
「特別になったのは今回からだけだろ。今まではずっとオトモダチだったもんな」
「だからこそ今までの分も祝いたいんだろ。……もしかしたらトモの誕生日を二度と祝えない可能性もあっただろ。そう考えたら、今こうしてトモとトモの誕生日を一緒に過ごせることが本当に嬉しいんだ。勿論嬉しいのは誕生日だけじゃないけど、普段は照れくさくてなかなか言えないからさ。……トモ、誕生日おめでとう。そして、本当に俺はトモが大好きだよ」
「――」
「さ、まずは簡単なものばかりだけど食事しよう。ワインも買ってきたんだ。トモも飲むだろ？　……トモ？」
「……勇気は疑ってたみたいだけど。俺だって本当に恋人と過ごす誕生日は初めてなんだって」
「…え？」
「誕生日に一緒に過ごして変に勘違いされたら鬱陶しいから、今までずっとかわしてきたんだよ。誕生日を一緒に過ごしたいと思った相手なんかお前以外いない」
「…っ…トモ…」
「俺の人生で、一番のプレゼントは勇気だよ。今まではずっと友達だった。でも今年は……。だから、今年の誕生日に初めて一番とびっきりのものをもらったことになるな。もう手放さないから覚悟しろよ？」
「へ、返品はきかないから、トモの方こそ覚悟決めろよ！」
「――好きだよ。勇気が、たまらなく、めちゃくちゃに大好きだ」
「…っだからっ、今日はトモの誕生日なんだって！　……俺が幸せにされてどうするんだよ…」
「まあこのあと、勇気にはとびっきりにおいしいマニアックなサービスで頑張ってもらうから、気にしなくていいって」
「えっ!?　俺そんなこと言ってない！」
「俺の、初めて恋人と過ごす誕生日。勇気がはりきって、忘れられない日にしてくれるんだろ？」
「……さっきは無理することないって言ってたくせに……。う〜、でもまずは普通に食事だからな！　誕生日がこない方が嬉しいなんて二度と言えないくらい、うんと楽しい誕生日にしてやるからな！」