冬休み 「トモ、今度の休み、トモの都合がよかったらまたうちに来ないか。一緒に家に帰ろう」 「勇気…。ありがとう。でもさすがに暮れと正月は特別だからな、勇気の家族団欒を邪魔するわけにはいかないだろ」 「特別と言うなら、俺にとってトモこそが特別だよ。それに、俺は本当にトモのこと家族だと思ってるし、休みの間もできるなら一緒にいたい。トモとゆっくり年の瀬を過ごして、一緒に新しい年を迎えたい。トモと一緒に年を越すことはこれから何度も経験するだろうけど、俺は、その最初をこの冬にしたいんだ。トモと離れたくない」 「――」 「トモ？」 「こっちが照れることばかり連発するな…。なんか、夏のときより勇気の押しが強くなったよな」 「そうかな？ それだけトモが好きで一緒にいたい気持ちが強くなったからかな」 「だから…」 「トモがうちの家族に気兼ねするっていうんなら、じゃあ俺も今年は帰らない。トモと一緒にここで過ごす」 「勇気。それはやっぱまずいだろ」 「大丈夫だって。夏も帰ったし、家はいつでも顔を出せるし。トモ、俺は休みの間トモと離れてたら、トモは今頃どうしてんのかなって毎日考えると思う。そしてトモがさみしそうにしているのは勿論いやだし、俺と離れててトモが楽しそうに過ごしてるのも、ちょっと…いや、かな。わがままなんだけど。だから俺の気持ちばかり押しつけて悪いけど、トモ、二択だよ。うちに帰って一緒に過ごすか、ここに二人でいるか」 「勇気…」 「それともトモは俺と離れて過ごしたいかな。いつも一緒にいるから、正月ぐらいは離れていたい？ それなら……」 「そんなこと考えるわけないだろ。俺だって勇気と一緒にいたい。勇気がいいなら、二人で新しい年を迎えたいよ」 「じゃあ…」 「勇気を帰さないっていうのは忍びないから、またお邪魔させてもらうよ。勇気の家はあったかくて、俺もほっとする。そんな勇気の家族のあたたかさの中に、年の瀬の大事なときに俺もいていいなら…」 「トモが来てくれるのは、うちの家族ほんと大歓迎なんだって。母さんなんか、息子がもう一人できたって、はしゃいでるくらいなんだからさ」 「勇気…ありがとう」 「お礼を言うのは俺の方だよ。トモと一緒に新しい年を迎えられるのがすごく嬉しいんだ。初詣も一緒に行こうな！」 「ああ」 「でも…勇気の家か……」 「……正月どきはその手のホテルは休みだと思うぞ…。外は勿論無理だからな」 「あ、やっぱ考えたことわかったか」 「……前もそうだったからな」 「まあホテルじゃさすがに味気ないしな。せっかくの、なんだし」 「なにがせっかくのなんだよ。…なんとなくいやな予感する」 「正月と言ったら勿論――姫はじめ、だろ？」 「――っ！」 「ま、それはここに帰ってきてからのお楽しみだな。これから何回も経験するだろうけど、まず今回は勇気と最初に経験する姫はじめだからな、今から楽しみだな。それもまた勇気と俺の新しい思い出の一つ、だろ」 「〜〜〜だから、トモっ――っ！！」 ＥＮＤ ※この話はＷヘヴンセットのＳＳ集の発売前に書いたものです。……ＵＰした二日後に読んで、公式で智勇の冬休みが出てる！ きゃあ〜！と焦ったものです。まあ、公式様とは違う別世界では、こういう冬休みもあるってことで…。 ●追加で勝手な妄想 この休み中に勇気と智友の関係が、勇気のお母さんにばれる話 智友を家に連れてくると、とても嬉しそうな勇気。いい友達ができたのね、と思っていたお母さん。 だけどあるとき、勇気たちのいる部屋に飲み物を持っていって、そこでキスしている二人を見てしまいます。 そこでお母さん、納得。 ――なるほどねー、どおりで勇気がすごくいい顔するわけだわ。トモくんもすごく幸せそう。 うん、本当に息子が二人になるのも悪くないかも。 お母さんに知られたことを勇気は気づかないままだけど、そのうち智友は気づきます。 そこでの勇気のお母さんと智友の会話。 「勇気はエンゲル係数高いわよ」 「その分俺が稼ぎます。…勇気が食べている幸せそうな顔を見るの好きですから」（そう言ってる智友も幸せそうな顔） 「勇気もトモくんの幸せそうな顔を見るの好きだと思うわよ」 「――ありがとうございます」 ちょっと照れて でもそのあとで智友、表情を変えて、 「そしてすみません……」 と、勇気とのことを謝る。 「謝ることないわよ。逆に勇気にあんないい顔させてくれてありがとう、と言いたいわ。これからも勇気と私たちをよろしくね」 「よろしく、お願いします」 きっちり頭を下げる智友 勇気のお母さんは智友びいき。智友と勇気がケンカしたら、智友の味方になって「勇気が大人になりなさい」と息子をたしなめたり。 「母さん…トモの味方なんだ…」 「そりゃそうよ。だってトモくんて母性本能くすぐるのよねー。勇気と違ってとっても礼儀正しいし。ああ、トモくんに早くお義母さんて言われたいわ〜。ううん、名前で呼んでもらおうかな〜」 「母さんっ!?」 ●さらにおまけの考察 智友は勇気のお母さんからすればやはり「息子」の感覚。 和希は啓太のお母さんからしたら、息子と言うよりも、いっぱしの立派な人物に映るんでしょうね。 智友は「いい子ね〜」って言われても自然だけど、和希は七年前も、そんなふうには言えない雰囲気がある感じ。（正体を明かさず、高校生の遠藤くんのままでも） 智友と勇気は、勇気のお母さんが二人の保護者みたいな立場だけど、啓太の場合は、啓太の保護者がお母さんから和希に移る感じ。啓太のお母さんは和希の保護者ではないな、と。 ●勇気が「姫はじめ」を知らない場合の会話 「勇気、姫はじめって知ってるか？」 「姫はじめ？ なんか、おいしそうな名前だよな！ ピンク色の大福みたいな、小さくてかわいくてもちもちっとしてて甘くて、地方のお土産品にありそうな名前だよな」 「……」（ぷっ） 「なんだよ、トモ！ 笑うなよ！」 「いや、甘くておいしいのと、食べ物っていうのはあってるかもな」 「やっぱりそうなのか？」 「勇気、耳かせよ」 「うん？」 「姫はじめっていうのは――」 「……――っ！ ぜ、全然食べ物じゃないだろ!? トモ！」 「食べ物だよ、一つの。俺も勇気を食べるし、勇気も俺を食べるだろ？」 「〜〜〜」 「俺にすれば甘くておいしいし。あ、勿論勇気にもおいしく俺を食べてもらいたいけどな」 本当に食べ物に関する意味合いもあることは、智友は知ってて黙っていると思います。 （あ、あと、勿論勇気は下の口で智友を咥えて食べる、の意味ですよ） |