「伊藤先輩、卒業おめでとうございます！」 「ありがとう」 「俺たち、啓太先輩のあとを継いで、ちゃんとベルリバティの今の校風を守っていきますからね！」 「そうですよ。先輩に負けないくらいりっぱな学生会にしてみせます！」 卒業祝いの言葉とともに、来年度に向けて口々に意気込みを見せる後輩たち。 そんな後輩たちの様子に啓太はあることを思いつき、いたずらっ子めいた笑みを浮かべた。 「啓太先輩？」 あたりを見回し、近くに自分以外の卒業生がいないのを確認する。それから啓太は、「じゃあ一つ頼みごとをしてもいいかな」と言った。 「頼みごと？ いいですけど」 「なんですか？」 「俺の在校中にはかなえられなくて、心残りなことが一つあるんだ。だから次代の学生会にぜひ叶えてほしいんだけど――」 「啓太！ こっちこっち！」 校門の手前で、和希が卒業証書入れを大きく振っている。 啓太はそれを見て、すぐに和希の元に駆け寄った。 「ごめんごめん。少し遅くなった」 「俺は別にいいけど。なんだか後輩たちに囲まれてたから、邪魔するのも悪くてさ」 「うん、声かけないでここで待っててくれたんだな。サンキュ！」 「……なんだか、啓太いやに嬉しそうだな。後輩たちとなに話してたんだ？」 「ちょっとした頼みごとをしてさ。頼みごとというか、次の学生会への宿題かな」 「最後の最後に後輩に宿題かあ。啓太もけっこう厳しい学生会長だな」 「そうかな」 「で、その宿題っていうのはなんだ？ どんなことを後輩に頼んだんだよ」 和希のその言葉に啓太は。 「内緒だよ」 和希が思わず言葉をなくしてしまうほどの、楽しそうな笑顔を見せて答えた。 『これは本来、俺たち学生には絶対に知らされることのない貴重な情報なんだけど、俺はあるとき偶然このことを知ったんだ』 『でも俺がそのことを知ったときには、もうとっくに過ぎてたんだ。だからいまさら他の学生たちに呼びかけることも出来なくてさ。だけど今年はこれからだろ。だから俺はもう卒業してしまうけど、ぜひ今年こそ学生会が中心になって行ってほしいんだ。来年のことは考えなくていい、たった一回きりでいいから』 『理事長の誕生日だっていう六月九日に、俺たち学生から日頃の感謝や親愛を込めてお祝いを――』 |