「え？ ベルリバティの理事長のこと？ 残念ながら僕は一回も会ったことないんだよ〜。どんな人だろうって興味津々なんだけどね。僕が研究所で働いていたときも所長に一度も会ったことがないんだ。ここだけの話、トノサマは理事長のことを何か知っているっぽいんだけど、絶対に僕には教えてくれないんだよ。どんな人か想像つくかって？ そうだなあ、きっと頭のいい人だと思うよ。研究所の所長も兼任しているからというだけでなくて、僕たちの研究結果に正確性が欠けていたり、別の論理の可能性があると指摘されたこともあったからね。それから堅実で真面目な人のようだけど、でもときどき楽しいことも考える人みたいだね。え？ 理事長の年？ う〜ん、頭が柔らかい人みたいだから、そんなに年長の人でもないんじゃないかなって、僕は思うけど。へえ、理事長の誕生日って６月９日なんだ。じゃあもうすぐだね。それでお祝いをあげるなんて、楽しそうだね！ ……あれ？ なんか去年卒業した子の中に６月９日が誕生日だっていう子がいたような気がするけど……うーん、誰だったかなあ…？」 「なに？ 理事長にお祝いだと？ そうか、それはすばらしい考えだな。確かに日ごろの感謝を理事長に伝えるのは大切なことだからな。誕生日か、なるほどな。そんな機会でもないとなかなか伝えられないからな。そんなすばらしいことを考えつく学生が俺の後輩にいたなんて、今のベルリバティにも見所のある学生が揃っているようだな。いや、いいことだ。え？ それは自分たちが思いついたことではなく、伊藤が？ そうだったのか……。しかし伊藤も水臭いな。理事長の誕生日がわかったときすぐに卒業生にも声をかければいいものを。そうすれば俺たち卒業生も参加してもっと大々的なお祝いができたものを。こんなに急では綿密な計画が立てられないではないか……なに、卒業生は参加しない？ そんなものに興味がない？ 丹羽がそう言ったと？ 相変わらず、仕方のないやつだな丹羽は。まあいい、これで日にちはわかったんだ今年なんの用意もしていないのに慌しく計画することもないだろう。今回は伊藤の意を汲んでおまえたちに譲ろう。俺たちが加わらない分も、ちゃんと理事長に感謝の気持ちを込めてお祝いをしてあげてほしい。頼んだぞ。それでお祝いにはなにを……そうか、まだ決めていないのか。まあじっくり考えて決めなくてはならないことだからな。しかしあまりぎりぎりになって適当なものになってはいけないからな、くれぐれも注意しろよ。それから理事長にどう贈るのか知らないが、理事長に贈るときはちゃんと礼節を守って、受け取る側の気持ちを考え、けして迷惑にはならない方法でな。贈り物に添える手紙はまず時候の挨拶から丁寧に書き出し、それから――」 「え？ ハニーがきみたちにそんなことを？ さすが僕のハニーだね。なかなかそんなこと思いつかないよ。理事長のことは残念ながらよく知らないから協力は出来ないんだけど、でも悪い人じゃないのは確かだよね。学園の自由な校風は今でも変わっていないようだし、それはやっぱり今の理事長の力でもあるんじゃないかな。ちゃんと学生の自主性を重んじてくれているというね。品物がどうとかいうより、とにかくプレゼントは気持ちがこもっていればそれで充分だと思うよ。ハニーが思いついたその計画、ぜひとも成功させてほしいな。きみたちの熱いハートを込めれば理事長はきっと喜んでくれるさ」 「理事長に祝い？ くだらないな。どうしても祝ってやりたいのなら、今回の発案者を紐で縛りつけてくれてやれ。もしくはコンドームやバイブレーターでも送りつけてやれば喜んで使うだろうよ」 「ベルリバティの理事長への贈り物なら、一生懸命製作した学生たちの作品でもいいんじゃないか。銀鈴祭は個々の才能や作品を発表する場だが、その主旨とは少しずらして自分たちがベルリバティで獲得した技能を理事長に返すというのはどうだろうか。これだと運動系の学生には合わなくなってしまうが……。俺が思うに、理事長は多分芸術方面にも理解が深いと思う。学生の気持ちがこもった作品をむげにすることはしないんじゃないか。むしろその一生懸命さを喜んでくれると思う。俺が言えるのはそれぐらいだが……でも考えて行動することはいいことだと思う。だから自分たちのためにも頑張って、みるといい……」 |