Ｐｌｅａｓｅ Ｓａｖｅ Ｍｙ Ｓｋｙ
Ｐｌｅａｓｅ Ｓａｖｅ Ｍｙ Ｓｋｙ
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Ｐｌｅａｓｅ Ｓａｖｅ Ｍｙ Ｓｋｙ
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子供のころ、ふと見上げた空の色を覚えている。 どこまでも深くどこまでも澄んだ真っ青な空。 風に乗って流れていく白い雲との対比が、さらにその青さを際立たせていた。 その空をつかまえたくて両手を伸ばしたけれど、全然届かなくて。 ただ伸ばした手の向こうで空の色だけが鮮やかだった。 横合いから差し込む太陽の光が眩しくて。 それでも手のひらに降り注ぐ太陽の光はあたたかくて。 眩しさに顔をしかめながらも、両手を伸ばしたままずっと空を眺めていた。 いつかあの空に届いたらいいなと思いながら。 ――初めてその少年に出会ったとき、太陽の匂いがする、と思った。 見ているだけでこちらまで引き込まれそうになるほどの無邪気で明るい笑顔。 日の光を全身に浴びて、闊達な少年はひとときも落ち着くことなく、駆け回っていた。 日に焼けた肌。伸びやかな手足。 めまぐるしく変わる表情にあわせて、さまざまな色を見せる青い瞳。 そこにいるだけで、ぽかぽかとしたあたたかさが伝わってくるようだった。 こちらを警戒することもなく、少年は屈託なく笑った。 名前を教えると、すぐに呼んでくれた。 その幼い声で、最初は少しはにかみながら。 「ななみ、ちゃん･･････ななちゃん？」 「うん、ななちゃんでいいよ」 「ななちゃん！ ねえねえななちゃん、ななちゃんもオレのこと名前で呼んで！」 「名前、なんて言うの？」 「そ、ら」 「･･･え？」 「そらだよ。羽柴空っ！ ね、ななちゃん。あっちに行こ！ あっちにオレの友達もいるんだ。ななちゃんに紹介するよ！」 小さな手がするりと自分の手の中にもぐりこんできて。 きゅっと握りしめられた。 それからぐいぐい引っ張られて。 その手をそっと握り返すと、手を通して少年のあたたかさが伝わってきた。 そして漠然と。 子供のころに見たあの青い空を、この手につかんだ、と思った。 そうして、現在。 「･･･え？ なにいきなり人の手なんか見てんだよ七海ちゃん」 「気を悪くさせてしまいましたか？」 「ンなことはねーけど。ただ、そんなふうにじっと見られると照れくさくてさ」 「そうですか？ 空くんの手ってやっぱり好きだなあと思って見ていただけなんですけどね」 「なっ、なんだよそれ！ ますますオレ照れくさくなるじゃんっ」 「ふふ。いまさら照れることもないでしょう？ 本当に空くんていつまでたっても初々しいままですよね。こうして一緒に住んでいるのに」 「だって七海ちゃんてつかみどころねーんだもん。いつまでたっても慣れるかよ･･･」 「それはマンネリ化しなくてすむってことですね」 「オレがふりまわされてばっかりってことだろっ!? ･･････ちぇー･･･」 眩しかった空は、今は自分の隣にある。 かけがえのないものとして厳然と存在しているのだ。 手の中の空。 この手につかんだ大切な宝物。 だからどうか。 この幸せを――そして、この人を。 守って。 |