Ｒｅｖｅｎｇｅ ２ 空が、立ち尽くしたまま生唾を飲み込む。 日頃あれだけ変態でオヤジでうるさくて子供で馬鹿みたいな真一朗･･･なのに。 そんなふうに悠然とした態度でこちらを見つめてくる様子には、男の色気のようなものが加わっていた。はだけたパジャマとそこからのぞく真一朗の生身の体。日に焼けて引き締まったその体に、空はいつもと別の見方でもってどきりとする。 空の足は自然に自分を誘ってきた真一朗のほうに向いていた。そのそばにいってソファの前にひざまづき、自然な気持ちでもってその肌に･･･触れる。手のひらから伝わる体温と、真一朗の鼓動。 片手で触れるだけではいられなくて、すぐさま両手を真一朗のパジャマの中に忍ばせた。自分が触りたい気持ちのままにゆっくりと愛撫を送る。真一朗のしっとりと手になじむ肌に手を滑らせてそしてパジャマからのぞく胸の突起にもそっと指を這わせてみた。触れていくとやわらかかったそこが硬度を増したように思えて、空は次にそこに顔を寄せて舐めてみた。そうするとぴくりと、真一朗の体が反応したのがわかった。 「･･･兄ちゃん、やっぱこうされると気持ちいい？」 視線を上げると、真一朗の手が耳元から滑り込んできて空の髪を梳いた。 「まあそりゃあな。カラダの構造は空とおんなじだろ。空がいいところは普通、男なら大抵いいもんさ」 「そっか･･･なんだか俄然やる気になってきた。思いっきり兄ちゃんをよくして喘がせてやるから！」 「ま、期待してるぜ空」 そう言った真一朗の唇に、空は下から唇を合わせた。自分がリードするのだという意識を忘れないようにして、その唇をこじ開け、舌を侵入させていく。特別自分からは動こうとしない真一朗の舌を引き込み、それに自分の舌を絡ませ、それからその舌を吸い、深いキスをかわしていく。口腔から溢れた唾液さえ気にせずに空はさらにキスを続けた。 空の体が不意にぞくりと甘く痺れた。キスに夢中になっていた空はその理由にすぐに気がつかなかったが、やがて真一朗の手が自分の服の中に忍び込んでいることを知った。服のすそをめくりあげ、直接肌に触れて胸の飾りを指で引っかいてくる。 「あっ･･･に、兄ちゃん･･･っ」 真一朗の指の腹でそこを押しつぶされると、キスで煽られていた空の体がたちまち反応する。 「空、オレにしてくれるんだろう？ ちゃんと続けろよ。空のべろテクもなかなかうまいもんだぜ？ もっと深くオレに絡んでこいよ」 「は･･･ぁ･･･ちょ、兄ちゃん、オレに触んなよっ」 「触るぐらいいいだろ？ ちゃんと主導権は空に渡してやってんだからさ」 「だ、だめだったらだめ！ よせってば兄ちゃん！」 空は真一朗の肌に触れていた両手を突っぱねると、慌てて真一朗から離れた。空に引き離されて、真一朗の手が柔肌の名残を惜しんだまま宙に放置される。 「なんだよ、空。お互いにいい思いをしてただろ？」 「だから、兄ちゃんはオレに触っちゃだめだって言ってんだろ！ 今日はオレがヤるんだからな！！」 「別にヤられるほうが触っちゃいけないってことはねえだろ、普通はさ」 「だめ。兄ちゃんはオレがいいって言うまでオレに触っちゃだめだからな！」 「なんだよ。空はオレにマグロでいろって言うのか～？」 真一朗が不満そうな声を上げたが、そこは妥協する気はなかった。 だめ、なのだ。真一朗の手に自由を与えてしまったら、こっちが真一朗を感じさせる前に、絶対その手淫に籠絡されてしまうのは目に見えているのだから。･･･もしかするとそれを見越して、真一朗も自分の提案を受け入れたのかもしれなかった。勿論今日はそんなふうに、相手の思い通りにはさせるわけにはいかないのだ。 「その約束が守れねえんなら、兄ちゃんの手、縛るからな！」 そこまで言うと、真一朗は溜息をついて引き下がった。空の意に従う証しに両手を軽く上に掲げる。 「いっそ縛られるのもいかがわしさ満点でおいしいけどな。ま、ともかく手は出さないでやるよ」 「絶対守れよ!?」 「守るって。それより空クン、兄ちゃんもっと気持ちいいことして欲しいんだけどな～。ほら、自分で手ぇ使えねえんだから、空がしてくれるのを待つしかねえわけだろ？」 真一朗の真意を確かめつつ、空は再び真一朗のそばに寄った。中途なままはだけている真一朗のパジャマをめくり、肩から滑らせて脱がそうとする。そうしながら真一朗の肩や脇にも触れ、鎖骨にくちづけを落としていった。 約束どおり真一朗は手を出さなかった。ただ空のするままに身を任せていた。だから空は邪魔されることなく、真一朗を「抱くこと」に夢中になる。 パジャマの上を完全に剥ぎ取ったあと、空の手は真一朗のその部分にかかった。ズボン越しに触れてみると、思った以上に固い感触が返ってきて空は思わずまじまじと真一朗の顔を見つめてしまった。 「兄ちゃん･･･ちゃんと感じてくれてるんだ？ オレのつたないやり方でもちゃんと勃ってんだな･･･」 ぎこちない愛撫だということは自分でもよくわかっていた。特別な技巧なんかもなく、ただ自分で触りたいままに触っているだけだったのだから。それでも真一朗が反応を返してくれることが空には嬉しかった。自分だけが一方的にしているわけではないことを実感する。 「だから触られたらそりゃあ反応するって。なんせ空クン一生懸命だから？ ンな色っぽい顔で頑張ってんのを見たら、やっぱオレとしてはたまらなくなんだろ。それに、けして下手じゃないしな。そういうことでハイ、続けて続けて」 「別にオレ兄ちゃんに奉仕してるわけじゃねえからな!? そこんとこ勘違いすんなよ!?」 余裕ありげな真一朗の言葉を聞いて、空がきつい視線で真一朗を睨みつける。実際は空がどういうつもりであろうと真一朗からすればまさにそんな感覚なのだが、そのことを口にすると空がむくれるのは目に見えていたので真一朗はあえてそれについてはなにも言わなかった。 「いつもいつも兄ちゃんばっかしオレに好き勝手してんだから、今日はオレが兄ちゃんを翻弄してやるんだからなっ」 そう言って、空は真一朗の胸や腹部を右手と唇と舌とで愛撫しながらも、左手を真一朗のズボンの中に滑りこませた。芯のはいったそれに指を絡め、徐々に手をスライドさせていく。 さすがに直接的な刺激は今まで以上の快感を引き出したらしく、いっそう真一朗の体が揺れた。自分の手で真一朗が感じていることがはっきりと伝わってきて、空は自分も熱に浮かされたように、さらに積極的に真一朗に触れていった。 真一朗ならこういうとき、下半身にだけ刺激を送ってくるわけではない。そこを重点的に責めながらも、他のところにも緩急をつけた刺激を与えてくれる。空はそのことを思い出しながら、自分も総合的に真一朗をよくさせてやるべく、ときにはソファに身を乗り出すようにして手や頭を動かした。真一朗の肌に手を滑らせ、胸の突起を指で弄び、あるいは口に含んで舌で転がす。胸やわきや腹部や肩などいたるところに唇を押し当て、あるいは舐めとっていく。ときおり太腿や首筋、顔の部位への愛撫も忘れずに行っていった。 手で包んだ真一朗自身の容量がだんだん増していくことがとても嬉しかった。耳から聞こえる真一朗の吐息も短く、そして激しくなっている。 そんな真一朗を見ていると、空の気持ちまでどんどん煽られていった。 真一朗も自分を抱くときこんな気持ちなのだろうかと、空は思う。抱いている相手の反応が気持ちよくて、それだけで自分の体が熱くなってしまうのだ。別に触れられているわけじゃなくても、自分が相手に触れているだけで。 やがて空は真一朗のズボンと下着を下ろし、真一朗自身を外に引き出した。それは手で触った感触と同様、すでに明らかな形を見せ、先端からは雫があふれはじめていた。こんな状態の〝真一朗〟を見たのが初めてとは言わない。けれど今は、自分がここまで育てたのだ。 空は左手で支え持つと、それに抵抗なく舌をあてた。溢れて流れ出しそうな雫を舌先で拾い上げ、そのまま手の中にあるそれに舌をからめていく。自分の中に埋め込むためにさらに感じさせていくのではなく、今は真一朗自身を気持ちよくさせるために、空はその行為に夢中になっていった。 （････はぁ、マジたまんねえなあ･･･） そんな空の様子を上から見下ろしつつ、真一朗はいつにないほど気持ちが煽られている自分を自覚していた。最初は空が自分を抱くと突然言い出したからどんなものかと思ったが、このシチュエーションはなかなか侮れなかった。自分に身を任せて翻弄される少年の痴態もそりゃあかわいいのだが、今は自分の快感に我を忘れているわけではなく、懸命に真一朗を気持ちよくさせようと頑張ってくれているのだ。単に〝真一朗自身〟に愛撫を送るだけではなく、様々なところを健気に考えながら触れてくる空のやり方は、その姿を見ているだけでもそのままヌけそうなほどだった。ましてやどこで覚えたものか――当然自分がしこんでやったからだが 「ん･･･兄ちゃん、気持ちいい？」 〝真一朗自身〟を舐めていた空が、顔を上げて聞いてきた。その熱に浮かされたような表情がまたたまらない。真一朗を責めながら、空自身も感じていることがありありとわかるのだ。 情欲にけぶった瞳。自分の唾液と真一朗の先走りの雫で濡れた赤い唇。自らも刺激を求めて無意識に揺れる腰と薄い汗で張りついた前髪。真一朗はそのまま十代のころのように勢いに任せて放ってしまいたい気持ちにもかられたが、さすがにここで早々に達してしまうにはプライドが邪魔をした。また空が望まない限り、自分の精で空を汚してしまうのにもためらいが生じる。 とりあえず真一朗は空に続きを促した。 「ンなの見りゃあわかんだろ？ 充分気持ちいいぜ、空･･･」 真一朗の声に含まれた吐息の熱さを感じ取ったものか、空は満足そうな顔を見せ、さらに行為を続けていった。今度は舐めとるだけではなく、その口を大きく開けて真一朗自身を含みはじめる。 「･･･く･･･っ」 少年の喉の奥に絞られて、図らずも真一朗の唇から声がこぼれた。少年の口の中で舌で嬲られ、歯でかすかな刺激を与えられる。 このままでは空の口の中に放ってしまうのも時間の問題のようだった。 （･･･このまま本当に空に喰われるかなぁ･･･） そんなこともふと考えてしまう。二人で過ごす長い時間を思えば、一度くらい本当にそういうことがあっても真一朗としてはかまわないとも思えたのだ。ここまで頑張っている空を見ていたら、それぐらいのご褒美はありかとも思えた。 （ただ･･･一方的にオレだけが脱がされるっつーのはつまんねえよな、空） 真一朗自身を口に含んでいる空の髪に触れると、空は顔を上げたりはしなかった。行為に溺れていて、先ほど自分に触るなと言ったことも忘れているのかもしれなかった。真一朗は幾度か空の頭を撫でてから目的の場所に自分の手を移していった。自分への愛撫に夢中になっている空の意識をかいくぐって、少しずつ空の服を脱がしていく。 |