ズボンから引き出して外の空気に触れた途端、啓太のそこがわずかに反応した。 一瞬正気に立ち返り、すぐにこんな馬鹿なことはやめようと思う。 だがそんな啓太に釘を刺すように、〝くまちゃん〟の言葉が聞こえた。 『やっぱり啓太クンは素直でかわいいねぇ』 「･･････っ」 『いいよ～、ボクがちゃあんと見ててあげるから一人でしてごらん。啓太クンのがどんどんおっきくなるところも、喘いでいるところも、イくところもちゃあんと見守っててあげるからねぇ』 「･･･あ･･･」 『ほんとはぁ、どうせそこまでしちゃったんならズボンもパンツもぜーんぶ脱いで足を広げてくれると、ボク最高なんだけどなぁ』 「そん、なの･･･」 『まぁいっか～。恥ずかしがり屋の啓太クンにそんなことはできないよねぇ。とりあえず今はね。とにかくいいよ、啓太クンの思いのままにしてみよう。ではレッツ、ゴー！』 「･･････」 別にクマの声に促されたからではないが、啓太の手が自分自身を触りだす。目を閉じて自分自身の今の形をなぞった。 先程していたときよりさらに硬く大きくなっている気がしたが、啓太はそうなった理由は怖くて追求できなかった。ただ自分の快感のために手を動かす。 ここには自分一人しかいなくて、別に先程とは何も変わっていない。そう思い込んで快感だけを追おうとするが、勿論その状況を黙って許してくれるような〝やつ〟ではなかった。 『ふうん～。啓太クンはいつもそういうふうにしているんだ～。啓太クンの手、もうべとべとみたいだね』 『おやぁ？ 啓太クンの指がしきりにそこだけこすってるねぇ。そこが啓太クンのイイところなんだね。あ、今度は爪まで立てちゃって。気持ちよさそうだな～』 『啓太クンの手の動きが早くなっているみたいだけど、そろそろゴールが近いのかなぁ？ うーん。もうひとふんばりだねぇ。がんばれ～』 「･･･もぅ、やだ･･････っ。そんな、こと･･･言うなよ･･･っ」 たまらず啓太は声をあげたが、それに対して〝くまちゃん〟からは楽しそうな笑い声が返ってきた。 『またまたぁ。そ～んなこと言ってもこのボクの目はごまかされないぞ～。啓太クン、今とっても気持ちよさそうだしね。こんなふうにボクに見られると興奮するのかなぁ？ どうせならズボンもパンツ全部脱いで、もっと見られたいって思わない？ 啓太クンが足を広げてくれたら、ボク、啓太クンのイケないところをもっともっと見てあげられるんだけどな～。啓太クンだってだぁれもいないお部屋で、足を広げてものすごく恥ずかしいコトをしているところを、ホントは見てほしいんだよね？ ボクにはちゃあんとわかってるんだぞ～』 「違う、そんなこと、全然････」 『ほんとはそうしてみたいクセにガマンしちゃって。そんなに自分をいぢめたいのかな？ 啓太クンてけっこうマゾさんなんだね～』 「･･･違･･･っ」 『――ねぇ啓太クン。今日はなんでこういうコトをしてたのかなあ？ こんなコトをするのは、もしかして啓太クンの日課なのかなぁ？ 啓太クンは毎日こんなにいやらしいコトをしているの？』 「･･･して、ない。こんなの･･･毎日なんか･･･っ」 『じゃあ今日はたまたまなんだ？ もしかしてオトモダチとえっちなビデオとか見たりしたのかなぁ？ それで興奮して、勃ってきちゃったのかなぁ？』 クマに図星を指されて、啓太が黙り込む。するとクマの声はいっそう楽しげに、『じゃあ啓太クンは女のコにイロンナコトをしているところを想像してしてたんだね～』と言った。 『やっだなぁ。もう、啓太クンのむっつりスケベ～。女のコの裸とか頭の中に浮かべてしてたんだね』 「･･････」 『あっれ～？ でもそーいえば啓太クンがしてたとき、確かカズキとかなんとか言っていたような気もするなぁ？ あっれ～、おっかしいなあ？ もしかして啓太クンはぁ、誰かにされているところを想像してしてたりしたのかなぁ～？』 甲高いクマの声が、そのあとふっと抑えられた声に変わった。啓太を追いつめるような意地の悪さを含んだささやき声になる。 『まさか、だよねぇ？ まさか啓太クンが、誰かに裸を見られているところとかぁ、チクビをいじられているところとかぁ、啓太クンのそこを他の人の手に扱かれているところを想像してしているなんてねぇ？ 誰かの指で後ろまでかわいがられちゃったり、おっきーのを入れてもらったり、そしてそれでイイところを突かれるコトを考えてこんなふうに一人でしちゃっているなんてねぇ？ だって啓太クンは立派な男のコなのにねぇ～？ ･･････それとも、啓太クンはそーいうコ、なのかな？』 クマの声でクスクスと笑われて、啓太の中でより恥ずかしさが増した。実際自分がここを固くさせて今こんなふうに触らざるをえなかったのは、男女のアダルトビデオのせいというよりも、明らかに和希を思い浮かべたからだった。和希にされている自分を想像して。 『啓太クンは、自分がされることばっかり考えてしているんだね。ほんとにやっらしいコなんだ～』 「――っっっ」 その声が啓太の耳に届いた途端、啓太の頭の中でなにかが弾けた。自分の弱いところを辿った指によって、一気に絶頂に導かれる。 「あ･･･あぁ･･･っ･･･っ」 そうして啓太は自分の部屋で、自分以外の声に煽られながら達してしまったのだった。 「････は･･･ぁ･･･」 啓太が絶頂から現実に戻ってくるべく、息を整える。快感に支配されていた頭が今の状況を認識し、のろのろと思考しはじめた。自分以外の声に導かれてしまったせいで、ティッシュを使うという基本的なことすら忘れていた。啓太は汚れてしまった手と自分自身を見下ろし、ひどく疲れた溜息を吐き出した。 『ああ、よごれちゃったんだね。そうだよね、啓太クンいっぱい出したもんねぇ。じゃあお洗濯しなきゃいけないから、ズボンとパンツ、早く脱がなきゃいけないよね。ほらほらぼうっとしていないで、早く脱がないとしみになっちゃうぞぅ。ほら啓太クン、早く早くっ』 クマの声に急かされて、啓太が言われたとおりにズボンとパンツに手をかけた。まだまともに動きはじめていない脳が、そのままクマの声どおりに啓太を動かしてしまう。 啓太がはっと我に返ったのは、もう下半身をさらけだしてしまったあとだった。 「――っ!?」 慌ててズボンとパンツを放り投げた場所を探すが、その前にクマのストップがかかった。 『だめだめ。せっかく脱いだのにまた履くことないだろ～。せっかく啓太クン、すごくかっわいい格好をしているのにさ。ねェ、そのまま足を開いてごらん。そしたらねぇ、ボクがしてあげるから。人にされるのが好きな啓太クンなら、もっともっと気持ちよくなりたいだろ？ どーせここまでしちゃったんだし、あとはもうなにをしても同じだよねぇ？ もう開き直ってお互いにうーんと楽しんじゃおうよ。ね、啓太クン』 「や･･･やだ･･･」 『そんなこと言っても、啓太クンはまだまだ物足りなさそうだけどなぁ。ほら、啓太クンの、またちょっとずつ元気になってきてるよ。啓太クンてばいやいや言ってても、本当はもっともっといやらしいことをされちゃいたいんだから。もう意地っ張りサンっ』 「･･････っ」 『いやらしいことをされるのが好きな啓太クンにはぁ、ボクがもっともっと気持ちいいことをしてあげる。ねぇ啓太クン、そのままベッドから降りてボクを抱きしめてよ。そうしてボクをベッドに連れてって。ここまできたらなにをしてももうおんなじだよね』 これ以上どんな目にあうのかと、啓太はしばらくベッドの上から動けなかった。だが身体の熱を振り払い、さっさとパンツとズボンを履こうともしない啓太をクマの声が楽しげに促す。啓太の中の迷いを見越したように。 『ほら、早く』と促されて、啓太はベッドから足を下ろし、部屋の隅にあったクマのぬいぐるみを手に取った。クマの顔を困惑した瞳で見つめると、クマ自体はなんの変哲もない無機物の表情で啓太を見返していた。 『じゃあ啓太クン。ボクをベッドに連れてって。それからベッドの上で足を開いて、ボクを啓太クンのイイところの上に乗せて？ それからねぇ、ボクの右の耳を軽く押してごらん』 困惑を引きずったまま啓太がクマの指示通りにする。足を開いてそこにクマをあてたとき、啓太の手は好奇心も手伝ってクマの右耳を触っていたが、もうこんなことはやめようという思考にも達していた。 いくら誰もいない部屋の中とはいえぬいぐるみを抱えてこんなことをしているなんて、あまりにも異常すぎる。単なる普通の自慰以上のことをしてしまっているような気がする。啓太は自分でも、こんなことをしている自分は変態じゃないかと思えてきたのだった。 ――こんなことをしているのに身体がさらに反応してしまっている自分は、もうまともな人間の範疇を越えているのかもしれない。 『うっわぁ。すっごく最高だね～。ボク今、啓太クンのココに顔をうずめちゃっているんだもんね～。啓太クンのココ、ますますおっきくなっちゃって。そんなにボクに触られて気持ちイイのかなぁ？ このままぺろぺろと舐めてあげたいところだけど、でももっとイイことをしてあげるからね。さ、啓太クン、ボクの右の耳を押してごらん』 「･･････」 啓太の指がいくらかためらいを示す。だがそれでもクマの言うように右耳を押したらどうなるんだろうという好奇心には勝てなかった。 しばし逡巡したのちに、啓太はクマの耳を押した。これまでは気がつかなかったが、クマの耳の中にはなにやら固いボタンのようなものが備わっていた。 「･･････ひぁっ」 クマの右耳を押した途端、啓太の身体がびくりと跳ねた。いきなりクマの身体が振動しはじめたのだ。 「あ･･･ゃっ･･･」 低いモーター音が部屋の中に響き、クマの振動がダイレクトに啓太のそこに伝わる。無機的な振動による快感に、啓太がまともな思考を取り戻せないまま翻弄される。 「な･･･なに、これっ･･･あっ･･･ああっ･･･！」 『気持ちイイ？ 啓太クン。これぞくまちゃんの最高にして最大の秘密へーきだよ～。名づけて〝啓太クンをめろめろにして天国（ヘヴン）まで連れてってあげようラブラブ機能！〟って言うんだよ～。啓太クンが気持ちよさそうにしてくれたら、ボクそれだけで幸せ。ね、気持ちイイ？』 「や、だめ････あっ･･･んんっ･･･」 思ってもみなかった作用に、啓太の手がようやくこれを止めるために動き出す。またあのボタンを押せば、この振動は止まるかもしれない。止められないまでも早くこれを引き離さなければ、このまま本当に追いつめられてしまいそうだった。 『あー、だめだめぇ。くまちゃんを止めたり、引き離したらだめだからな～。啓太クンだって気持ちイイのに、無理してやめるなんてつまんないことだよ。このまま自分にしょーじきになってごらん。ほんとは、このまま最後までしてみたいんだろぅ？』 「そんなのだめだって。だって俺、このままじゃ･･･っ」 『このままじゃ、もっともっとおかしくなる？ いーんだよ、啓太クンはもっとおかしくなって。ここにはくまちゃんであるボク以外だーれもいないしね。啓太クンは安心して、乱れていいんだよ。･･･ね、もうここまできちゃっているんだから、あとはもうどこまでいってもおんなじだってボク何回も言ってるよね。つまらないことを考えるより、もう開き直ってボクとたぁっぷり楽しんじゃうほうが、啓太クンだって楽しいと思うなぁ。ここで思いっきり乱れて、それで朝には全部なかったことにして忘れちゃえばいいんだよ。ね、これ以上ない、ないすあいであだろ？』 「････あ･･･」 啓太の快感に蕩けそうになっている思考が、クマの言葉の、朝には全部なかったことにしてしまえばいいという言葉を捕らえた。 ここで思いきり乱れてしまっても。自分の快感に正直になって、どんなにあさましい姿をさらしても。 全部、朝にはなかったことにしてしまえば――いいのだ。 「ん･･･っ」 『腰、揺らしてごらん啓太クン。もっと自分からボクを求めて？ それから声も聞かせてほしいなぁ。どうせ朝には忘れちゃうんだからぁ、思いっきりその気になって楽しんじゃおうよ。ね？』 「あ、んっ･･･っ」 『そうそう。本当に素直でいいコだよね、啓太クンは。上半身も汗ばんでいるみたいだし、着ているもの全部脱いじゃってもいいかもね～』 「･･････っ」 啓太を責めるクマの振動は、刺激に変化がない分それで達するにはもどかしくて。啓太はクマに言われるまでもなく自分から腰を揺らしていた。もっと強い刺激がほしくなって、思わず手を伸ばしてクマの体を自分自身に押しつけてしまう。 今の自分がどれほどあさましくて変態的な行動をとっているかは、啓太はあえて考えないようにした。とにかく自分の中にあふれる快感をどうにかしたい気持ちでいっぱいになる。 『あ、いっそボクを下にして啓太クンがまたいで乗っかってくれるっていうのもいいかなぁ～。そういう大胆な啓太クンの姿もボクみったいな～。自分で腰を落として喘いじゃったりしてね～。どーせ誰も見ていないんだし、啓太クンの好きにしていいからね』 「･･･ひゃ、あん････ん････」 クマの身体から発せられる振動に自分自身を預け、啓太は間断なく襲ってくる快感に身を任せた。敏感になっている自分自身に触れるクマの布の感触やらベッドシーツのしわの感触さえも、啓太を更なる高みに追いあげていく。 「あ･･･っ、やだ････こんなの････っ」 『やだ、じゃなくてぇ。すごく気持ちがよくてクセになっちゃいそう、だろ、啓太クン。クセになってもいいんだよ～。そのたんびくまちゃんがますますやらしくなる啓太クンを見ててあげるからね～。すすり泣いて、それでも腰を揺らしてかっわいい声で鳴く啓太クンをじ～っくりと見ててあげるからね～』 「や･･･ぁ･･･っんっ･･････っ」 クマの身体のもどかしい振動ながらも、耳から聞こえるクマの笑いを含んだ声が合わさって。 「あっ･･･あぁ･･･っ･･･！」 啓太はやがて、この日二度目の絶頂を迎えた。 そうして自慰と言うにはあまりにも刺激的すぎた快感に、啓太はそのまま意識を手放したのだった。 『――ごちそうさま』 意識を失う直前、啓太は低い声で呟かれた、そんな一言を聞いたような気がした。 |
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締めくくりは和希×啓太で。
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